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小鳥の飼い主さんへ そのう炎(そ嚢炎)にご用心!!

小鳥の飼い主さんへ そのう炎(そ嚢炎)にご用心!!

当院の診療対象動物は「犬 猫 小鳥 象 ライオン ついでにオカピもいらっしゃい」と広い(ウソです)のですが、近所にペットショップが数多くあるせいか、小鳥の占める割合が増え続けています(これはホント)。

来院される小鳥さんの病気の内では、そのう炎(そ嚢炎)が最も頻度が高いので、この病気についてご紹介致します。

はじめに そ嚢ってなに?:
そ嚢は食道の一部が袋状に膨らんだ器官で、飲み込んだ物の「一時貯留場所」としての働きがあります。
ワシタカなどの猛禽類では丸飲みした獲物をここに貯留し、帰巣後ゆっくりと飲み直しますし、インコや文鳥など草食性の鳥類では、危険な地上で大急ぎでついばんだ穀類などを、そ嚢に貯めておき、餌が水分を吸って軟らかくなってから、胃に送り込むのです。

そ嚢はどこにあるのか?:
まだ羽毛が生えそろわない幼鳥ですと、分かりやすいです。首の背面に食べた餌が透けて見える場所がありますが、そこがそ嚢です。

成鳥の場合、羽毛を掻き分けるように探します。

どんな病気か?:
上記のとおり、そ嚢は食べた物を一時的に貯めておくところで、栄養豊富です。しかも胃液などの消化液を分泌しないので、細菌やカビなどの微生物が住み着きやすく、異常増殖した微生物により「そ嚢炎」が生じるのです。
多くの場合、異常増殖した菌は胃・腸にも影響を及ぼし下痢などの症状を呈します。

症状は?:
そ嚢がブヨブヨと膨らみ、赤黒い色調であることと、餌の吐き出し行為がそ嚢炎にみられる特徴的な症状です。
オスのインコなどでは、求愛行動としての餌の吐き戻しがあり、紛らわしいのですが、吐き出すときの首の振り方(求愛行動では首を縦に振りながら吐き出す場合が多いが、そ嚢炎ではピッピッと横に振る場合が多い)などで見分けられます。
口や鼻や眼の周囲が汚れ、羽毛にも汚れがつく。
口をあけて呼吸する、食欲・元気がない、下痢、やせて体重減少、特有の嫌な臭いがする、などの症状も見られます。
そ嚢炎になりやすい小鳥は?誘因は?:幼鳥や老衰など体力の衰えた鳥は、そ嚢炎になりやすい傾向があります。
アワダマ、パンなど炭水化物の豊富な餌を与えることも誘因になります。

原因となる微生物は?:各種細菌、真菌(カビ)、動物性原虫が原因微生物となります。
動物性原虫(トリコモナスなど)については、1個体でも検出したら病原体と看做します。
細菌や真菌は、元々小鳥のそ嚢の常在菌であることが多いので、病原体と決め付けるのは難しいのですが、菌種・菌数を勘案して判定します。

検査・診断はどうするの?:まず、そ嚢を肉眼的によく観察し、腫脹、うっ血・充血の有無を調べます。これら所見に、餌の吐き戻しがあれば、その時点でそ嚢炎と診断しています。

ついで、そ嚢にゾンデを挿入し、そ嚢分泌液を採取し、顕微鏡で調べます。
顕微鏡では直接塗抹標本(トリコモナスなど動く病原体、真菌など比較的大きな病原体を検出するのに適する)と固定・染色した標本(細菌や真菌をより詳しく調べる)の二通りについてチェックし原因の特定を行います。

治療について:原因となる微生物を取り除く薬を投与します。
トリコモナスには抗トリコモナス薬を、真菌に対しては抗真菌剤を、細菌性のそ嚢炎には抗生物質を投与します。
実際には混合感染しているCaseが多いので、複数の薬剤の配合し投与します。

ご家庭でのケアのポイント:小鳥の病気はご家庭でのケアが重要です。ご家族で共有してください。
①保温:小鳥では、どんな病気に関しても、「衰弱」→「体温保持困難」→「衰弱の進展」→「死」のコースが直接的な死因になります。ケージ内の温度を27℃以上に保つことが必要です。
②安静:あまり動かない様に小さめのケージに。止まり木を外すことも検討。
③清潔:ケージ、餌箱、水入れなどは水洗し日光消毒。希釈したハイターに漬け置くことも。
④食餌・水:毎回、全量を取りかえる(注ぎ足さない)。パン、お米などそ嚢内で発酵(腐敗)し易いものは与えない。食欲が乏しい時には、強制給餌(すり餌)するなど工夫を。

予後(症状の経過予測)について:通常(衰弱が進んでいなければ)、治療に良く反応する病気です。しかし、小鳥は一寸したきっかけで、一気に病勢が深刻化するケースがあり、「一概に言えない」ことをご了承ください。

ご不明の点は何なりとご質問ください。